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その7 第八話 俺たちの新居

Author: 彼方
last update Last Updated: 2025-09-21 11:00:00

65.

第八話 俺たちの新居

 宝くじを当てた日以来、中間地点の物件探しを暇があれば毎日のようにしてた。

 それは俺だけじゃなくて、あやのさんもマキも各々チェックをしていた。一応、俺たちの新居っていう感じで借りるつもりだから、全員がある程度納得できる部屋がいい。ちなみに、なんでか美咲も一生懸命に検索してた。これ、おまえんちじゃないからな。

 俺はできれば庭付きがいいなと思ってて。庭なしなら広めのベランダが欲しいと考えてる。なんとなく、植物育てたいなと思って。自分で育てたミニトマトとか食べたいじゃん。小さくてもいいから家庭菜園をやってみたいんだよ。

 あやのさんのこだわりはキッチンの広さだった。とくに流しの大きさは気になるようで一生懸命画像を見てた。

 マキはコンビニが近いかどうかを気にしてた。たしかに、近くにコンビニがあれば有り難いかもしれない。

 とくに夜も働くマキにとっては一般人の生活リズムは当てはまらない。24時間開いてる店があることは重要なことなのだろう。

 それぞれの理想を取り入れて探すとなるとなかなかハードルが高い。

 ──数日後

 今日はあやの食堂に3人集合して物件の話し合い。

 もう俺は折れようかな。家庭菜園は豆苗でもやって満足すればいいか。そう諦めかけてた時だった。

「あった! あったわよ! コレ、完全にみんなの理想を叶えてくれるやつ!」

「本当? あやの」

「本当本当! これならOKなはず!」

 それは予想していた以上の好条件な上にアパートやマンションではなく一戸建てだった。外壁は赤茶色でそれもまたオシャレに思えた。

「ここにしよう!」

 後日、俺たち3人はこの物件を直接見に行

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